頭がいい

車で移動している最中、窓から見える景色が会話の話題になる。

子「カラスって頭がいいんだよ！」

父「そうなんだー」

そう相槌を打ったもの、私は気になっていた。
この息子の「カラスは頭が良い話」は前にも聞いた。
むしろ鳥の話が出るたびにカラスの「頭が良い情報」を出してくる。
５歳の子供がやってる事なので、知らんぷりをしてしまっても良いのだけれど、
まぁでも、視点を変えて突っついてみる事にした。

父「カラスが頭良いって言うけどさ、それはどういうことなの？」

子「道具を使って虫をとったりするんだよ！」

父「なるほど」

子「あとね、車の前にくるみを置いて割ったりするの」

父「それはすごいね。確かに頭がいいね」

子「でしょ！」

父「でもさ、カラスってそうやって道具を使ったり、車を利用したりするけどさ」

子「うん」

父「ゴミ置場のゴミ袋あさってたりするじゃん」

子「うん」

父「頭がいいのにあんなに臭い物食べるんだよ。お父さんはそれがわからない」

子「うん、、」

父「臭いがよく分からないとかそういう理由があるのかもしれないけどさ」

子「うん、、、」

父「でも腐ってるんだよ。そして片付けもしないんだよな」

子「、、、、」

父「お父さんはカラスより鳩の方が頭が良いと思うな」

子「なんで？道具使わないよ？」

父「でもさ、鳩って人間から食べ物もらったりするでしょ」

子「うん」

父「あれはつまり人間が餌をくれるのを分かってるからそれを覚えて近づいてくるって事なんだけど、中には鳩に餌をあげる事を目的に近づく人間もいるわけ。パンとかお菓子を先に買っておいて鳩が集まる公園に行く人がいる。これがどういう事かわかる？」

子「、、、わかんない、、」

父「これはつまり、鳩が人間を利用してるってことなんだよ。”俺パン食べるんでーお菓子も食べるんでー”って人間に覚えさせて、自分たちが餌を食べるチャンスを増やしてる。つまり人間を一種の道具にしてるってことだ。これは頭がいいよ。カラスも頭がいいけど、鳩はもっと頭がいい。だって、腐ってない食べ物を引き出す能力があるんだぜ」

子「、、、、」

父「で、さらにいうと鹿はもっと頭がいい。特に奈良にいる鹿なんかは始めは近づいてくるんだ。”なんかくれよー腹ペコなんだぜー”ってじーっとまってる。人間が食べ物をくれるのを知ってるから。でも、食べ物を一通り貰って、相手の手元に食べ物が残ってない事を把握した途端にびっくりするぐらいプイッと他所を向いて歩いて行っちゃうんだ。お尻向けてどっかにいっちゃう。めちゃくちゃしたたか。鳩よりも断然察する能力が高い。だから頭がいい。」

子「、、、、、」

父「でも鹿はチョコボールみたいなウンチを山ほどするんだ。ボロボロボローって素知らぬふりしてそこら中に撒き散らしていく。もちろん掃除もしない」

子「、、、、、、、」

父「広島の宮島ってとこでも鹿がいるんだけどね、そこじゃソフトクリームにチョコのお菓子をくっつけた”鹿ソフトクリーム”のが売られてんの。鹿のフンみたいに見えるんだ。そしてそれをみんな喜んで買って食べるんだよ。鹿のフンに溢れたその場所で、鹿の糞に見えるようなソフトクリームを食べてる。お父さんもそれを食べた事があるんだけどすごく不思議な気持ちになったよ。フンじゃないのに。でも心の１%ぐらいはフンを食べてるような気持ちになってくる。ほんとさ、人間ってすごい生き物だよね。」

 

− いつか”鹿ソフトクリーム”を食べさせてあげなきゃ、だ −